The fall is forest vol.39





「待ちなさい。ピリーリを大声で呼ぶことも探しに行くことも認めません。」

さっきまで森に穴を開けたヤツラから一方的に迫られ、
しどろもどろだったオオキマモルが、突然落ち着いた声に変わったので、
僕は立ち止まり彼のほうを向いてギョッとした。いつのまにか目の前に立っている。
森に穴を開けたヤツラも、彼の声色と態度の変化、または身のこなしに驚いたのか、
もともと丸い目をさらにまんまるにしてあっけにとられている。


「いいですか、よく、聞いて下さい。森の意思。モリラ。」


「も、森の意思?なんのことだの?」


「ですから、よく、聞いて下さい。モリラ。あなたは、森の意思。です。」


(どういうこと?森のニシンとか言ってるわよ。)
(バカねアンタ!あれがニシンなわけないでしょ!!ニシンて魚じゃないの。)
(あれのどこが魚なのよ!?)
(だから魚じゃねーって言ってんのよ!!)
(うっさいわね!ニシンみたいな顔しやがって!)
(ふたりとも静かにして。森の意思って言ったのよ。)
(森の石?)
(てめーぶっ殺すぞ。)

(ふぅー。まあまあ。とりあえず聞こ。)


向こうで森に穴を開けたヤツラが仲間どうしでなんだかもめていて、
ブルーノがめんどくさそうになだめている。

それが落ち着いたのを確認すると、オオキマモルは話を再開した。

「モリラ、あなたは森の意思が具現化した姿なのです。
言い換えれば、森の化身なのです。
私はこれから、あなたを森に戻します。
そうすることで、森の記憶はすべて蘇るでしょう。
あなたが森でなくなったために一時的に損なわれている、
自然現象の循環システムや動植物の生命サイクルはもれなく元通りに復旧します。
まず、このことが、私の目的のひとつです。

もうひとつ、申し上げることがあります。
モリラ、あなたが突如、森から変化して、その御姿が形成されるのを、
私は目の当たりにしておきながら、その様子に見入り、
即座に対応せず、あなたを今の御姿のまま放置したことを、
あなたも含め、森全体に深くお詫び申し上げます。

申し訳ありませんでした。

あなたが突如変化した原因はおそらく、
そこにいる者たちが外界から侵入するのを阻止し、撤退させるために、
彼女らの船の機能を停止させた結果、予想外にも船は木々をなぎ倒し、
森に穴を開ける結果になってしまったことに対する懺悔、
また、侵入者であるのに、彼女らの安否への気遣い。です。

私はその御姿になったあなたをピリーリとブルーノを遣い、
見守らせていただいておりました。
モリラであるあなたに、森の記憶の片鱗が見えるまでは。

自覚があるかは存知上げませんが、もう、あなたは戻りたがっている。

ですから私は、これから、あなたを森に戻します。



…同時に、今の御姿、モリラで過ごした期間の記憶は、無くなります。

だから、ピリーリを呼ぶことも、探すことも、お止めなさい。
ピリーリは、森全体の環境や、あなた自身のことを気遣い、
ここまであなたを連れてきたのです。
あなたとの関係が思い出になってしまうことを承知し、断腸の思いで、
ここまであなたを連れてきたのです。
そして何も告げずに去ったのです。」



僕は雷に打たれた。いったい何を言っているんだ。

少しの間、動けなかった。
photo by eena x exsoup
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